・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)における主なリスクとして以下が挙げられる
 -介護事故や転倒などのケガ、利用者の尊厳侵害に起因する施設賠償責任リスク
 -入居者の生活を脅かす感染症や食中毒などのリスク
 -入居者の個人情報漏洩リスク
 -入居者間のトラブル
 -慢性的な人手不足教育不足
 -社会保障制度の変更をはじめとした各種法律改正
 -移送中の自動車事故
 -火災や自然災害等による車両や施設のき損
・社会福祉を目的とする介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)では、利用者の尊厳ある生活を確保するためリスク対策を行う。
・介護事故、本人要因のケガ、尊厳侵害、感染症、食中毒、施設賠償責任リスクなどは介護事業者向け総合賠償責任保険を活用。保険金額は最大損害額を考慮して決定。
・個人情報漏洩リスク対策の一つとして個人情報漏えい保険を活用
・移送中の自動車事故に備え自動車保険は必須
・火災は火災保険、地震は地震保険を活用(地震保険の引受条件に注意)

その他懸念されるリスク等ございましたら、簡易分析シート で診断をすることができます。

介護老人福祉施設の特徴的なリスク

介護老人福祉施設は、介護保険法で所定定員が30名以上の特別養護老人ホームと定義されており、身体または精神に著しい障がいがあり、介護保険制度で要介護認定が出た人に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴・排せつ、食事等の介護その他の日常生活のケア、機能訓練、健康管理および療養上のケアを行うことを目的とする施設です。
同じ施設でありながら、老人福祉法の「特別養護老人ホーム」を介護保険上の「介護老人福祉施設」と言うため、ここでは双方を略して「特養」という呼称で統一します。
特養は介護保険施設なので、施設の介護サービスには介護保険の適用を受ける事が可能であるものの、食費や居住費は保険適用外のため、全額自己負担となります。また、分類として入所者4人を1部屋にした従来型と、小規模生活単位型(ユニット型施設)に分けられ、ユニット型は個室を基本としています。
特養での仕事は、身体的機能や認知的機能の低下により介護の必要な方々と密に接することになります。介護を必要とする高齢者が1日1日を自分らしく過ごす「生活の場」であり、入居者の方々の安心・安全かつ自立した尊厳のある生活を提供する場所です。そのため、ケアの提供過程で発生する介護事故や本人要因のケガ、施設の欠陥等を原因とする施設賠償責任リスクや感染症の発生、さらには入居者の尊厳侵害や食中毒のように入居者の安全を阻害するリスクをいかに回避するかが大きな課題です。
また社会保障費の増大に伴う社会保障制度の変更をはじめ、多くの法令と接しているため、法律改定(保険制度も含む)も特徴的なリスクとして挙げられます。
移送中等の自動車事故や地震・火災等についても、車両や建物等の施設の損害もさることながら、被害や安全配慮義務違反が認められた場合の使用者賠償責任リスクにも注意する必要があります。
既往歴等の特殊な情報を預かることから、個人情報漏洩リスクへの対策や、助成金やその他の資金繰りに関わるコンプライアンス違反についても留意しなければなりません。
発生頻度の高いリスクとしては、入居者とのトラブルや人材の確保・育成等が挙げられます。

具体的なリスク対策

特養はその目的が社会福祉であるためリスク対策の目的は、利用者の自立した尊厳ある生活の確保であるということを忘れてはいけません。
そのため、利用者に対する安全の確保・介護事故の予防は必要不可欠な取組みですが、利用者の尊厳重視という視点を考慮に入れながら進めていく必要があります。
例えば、転倒事故のケースでは、事故防止のために自由な歩行や入居者の身体を拘束しすぎると、尊厳重視の視点が欠けてしまいます。つまり、転倒させないための拘束ではなく、転倒してもケガを最小限に食い止めるための対策の策定が重要なのです。
同様に、事故防止のみが目的であれば、食事の際の誤嚥事故を防止するために食事介助をやめて栄養補給を行い、行方不明事故を無くすために、完全に閉ざされた状況を作ることも可能です。
しかしながら、それらは不当に自由を奪い、尊厳侵害に繋がり、居住者に不満や不安を感じさせ、さらには特養側の安全配慮の姿勢そのものが間違っているという苦情や否定的な評判が立つようになるかもしれません。そうともなれば、入居者の家族や地域に対する信頼が失われ、介護事故は無くなっても、そもそもの介護事業所の存在意義を見失います。
東京都福祉保健局の「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」では、1)報告制度、2)委員会の運営、3)業務手順書の整備、4)研修、5)家族とのパートナーシップ、6)介護記録の6つの仕組み作りを推奨しており、具体的な事故対策としては、事故発生の要因を大きく「職員要因」、「本人要因」、「設備・環境要因」に分けて、要因ごとの対策検討を勧めています。

特養における保険の活用

特養における保険の活用は、事業運営上のリスクを中心に考えていく必要があります。
具体的には介護事故、本人要因のケガ、施設賠償責任リスク、感染症の発生、尊厳侵害、食中毒等が挙げられます。
これらのリスクに対しては各社が取り扱う介護事業者向け総合賠償責任保険が有効です。同時多発型のこれらのリスクに対応するため、最大損害額を考慮した保険金額の設定が肝要です。従業員に関わるリスクは労働災害に対する福利厚生規程等がある場合には上乗せ労災保険を検討し、安全配慮義務違反による使用者賠償責任リスクが問われた場合に備えて使用者賠償責任保険を検討します。
また、人材の流動性の激しい業界であるため、人材の確保・育成および雇用リスクの観点から団体長期障害所得補償保険やメンタルヘルスサービス付きの福利厚生タイプの生命保険を取り入れることも、人事戦略の一環として効果を発揮するでしょう。
通勤途上や利用者宅への訪問途上における自動車事故への対応は自動車保険を活用します。
企業資産に係るリスクについては、施設自体や介護医療機器の地震・火災等に備えた火災保険および引受け条件に難しさはあるものの、拡張担保(縮小/免責の活用)による地震保険の活用も検討に値します。
その他のリスクとしては入居者、従業員の個人情報漏洩対策の一つとして、個人情報漏洩保険も効果的です。

その他懸念されるリスク等ございましたら、簡易分析シート で診断をすることができます。

※このご案内は概要を説明したものです。詳しい内容につきましては、取扱代理店または引受保険会社までお問い合わせください。