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2019.07.12

【寄稿】BCPの必要性について

日本が地震国であることは周知の事実であり、平成の時代も阪神淡路大震災や東日本大震災等を経験しておりますが、2018年は特に台風等による風災や水災で多くの被害が発生した年となり、保険業界における損害保険金の支払いも1.3兆円と7年ぶりの高水準となりました。しかし、これだけ地震を含む多くの災害が発生しているにも関わらず、有事の際の事業中断に備えるBCP(事業継続計画)を作成している企業は非常に少ない現状があり、中小企業庁が中心となってその普及に努めています。北海道においては、震災を契機として経産局や北洋銀行等の金融機関が導入を促し、BCP策定企業が6割増しになりましたが、それでも企業数は29社に留まります。また、大規模災害時に備えて自治体においてもその必要性が問われていますが、BCPそのものは8割超の自治体が策定済みですが、国の求める条件をすべて満たす計画を策定している自治体は1割以下に留まっています。BCPの作成及び運用は災害国の日本において必要不可欠な取組であるため、現在においても中小企業等強靭化事業として防災・減災に関わる①普及啓発、②計画策定支援、③指導人材の育成が図られていますが、今後益々の推進が求められます。

BCPの必要性

BCP(事業継続計画)は、中小企業庁の定義では、「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画」となっています。
しかし、現実には大規模災害が発生した場合、財産損失としてどの程度の損害が発生するのか?事業中断によって売上が無くなってしまった際に、現在のキャッシュで何か月間事業を継続する事が出来るのか?さえも把握できていない企業が多いと考えられます。その結果として、東日本大震災等でも多くの中小企業が人材や設備を失い、廃業に追い込まれたり、復旧の遅れによって自社のサービスや商品の提供が滞り、顧客離れによって事業を縮小した会社が多く発生しました。日本においては、いつどこで災害が発生するか分かりませんし、事業中断に至るリスクは災害だけではないため、その時の対処について準備を行うのは、企業が安定的な経営をするためには必要不可欠とも言えるでしょう。

BCPの普及のために

BCPが普及しない原因として、企業の災害に対する認識の問題もありますが、BCPの作成自体が困難であり、時間とコストを要するという事や、様々な課題を抱える中小企業にとってBCPは喫緊の課題ではないという事があるかと思います。そのため、経済産業省は中小企業に災害対策を促すために中小企業等経営強化法等を改正し、BCPを認証する制度を設け、認証企業は国の補助金を優先的に使えたり、保険料の低減や防災関連の設備投資について税優遇や低金利で融資が受けられるように検討をしています。しかし、実際に事業会社だけでBCPを策定するには大きな困難が伴います。そこで登場するのが、リスクに対する専門知識を有する保険代理店です。先進的な保険代理店は、保険の活用を通して災害等で被災した建物や設備を補償したり、事業中断における利益や事業継続費用の財務補填のみならず、有事の際の被害の最小化やBCPの作成支援を行う役割も担っています。また、損害保険会社は各地域の自治体と積極的に提携を締結し、BCPの作成支援を積極的に行っており、今後益々そういった保険業界のBCP作成への関わりとそれによる中小企業等の安心・安全な経営の実現が期待されます。

寄稿者紹介

NPO法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 副理事長
株式会社AIP 代表取締役 CEO 松本一成