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2019.10.01

コンプライアンス違反

慎重な運用が続いているため、適用例は僅か2件に留まってます。しかし、初の司法取引であるタイの発電所を巡る贈賄事件で罪を問われた三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の元取締役に有罪判決が下された事もあり、今後の更なる運用が期待されます。(司法取引の2例目は日産のカルロスゴーンです。)また、内部通報制度についても適切な内部通報制度を持つ企業を認証する国の新制度が始まり、第1号は伊藤忠商事とMS&ADインシュアランスホールディングスとなりました。日産のカルロスゴーン事件の発覚も内部通報制度であり、今後はその実行性が高まる事によって企業に自浄作用が働き、不祥事が減少することが期待されます。

一般的にこのような不正をもたらす要因として「不正のトライアングル理論」という考え方があります。この理論は「個人的理由」や「組織的理由」に基づいて、「動機・プレッシャー」「機会」「正当化」の3つの要素が揃った場合に不正が行われる可能性が高まるという理論であり、「個人的理由」には個人的な失敗や問題、地位向上への欲望、不当な要求への対応等があり、「組織的理由」には過剰のノルマや業績悪化、株主や競合他社からのプレッシャー等が挙げられます。具体的には、そのような環境下において、不正を行う際の心理的なきっかけである「動機・プレッシャー」が生まれ、不正を行おうとすれば可能な環境として「機会」が存在し、自分の不正を正当化するための都合の良い理由付けである「正当化」が出来た場合に不正が行われるという理論です。

近年のコンプライアンス問題の範疇は、単なる法令順守ではなく、企業倫理やステークホルダへの配慮に至るまで幅広くなっていますが、いずれも企業の信用力やブランドの下落、それに伴う売上の減少、罰金等の行政処分によって大きな損失に繋がる可能性が高く、全社員が一丸となって起きない環境作りを進めて行く必要があります。また、企業の業種や特性によっては、コンプライアンス違反によって取引停止や入札禁止等の具体的な売上減少に繋がったり、それらが品質や性能に関わる場合には不法行為や債務不履行となり賠償責任を負う可能性もありますので、十分な注意が必要です。今後もコンプライアンスに関するリスクが高まる事が想定される中で、それらに関連する保険の必要性も高まっています。基本的に法律違反がある場合は保険を適用する事は難しいですが、過失によって経営陣が任務懈怠責任を追及されるリスク(D&O保険等)や従業員へのハラスメント等の雇用リスク(雇用慣行賠償保険等)については、会社法や労働施策総合推進法の改正の影響も踏まえしっかり検討する必要があるでしょう。

NPO法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 副理事長
株式会社AIP 代表取締役 CEO 松本一成