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2019.07.01

PLリスクについて

近年、取引のグローバル化やネットを通した販売の増加、消費者の権利意識の向上等に伴い、PL事故に関するリスクが高まっています。通常、民法の不法行為責任に基づく賠償責任は、被害者が製造業者に「故意」又は「過失」があったことを立証する事が必要ですが、製品の高度化・複雑化により困難となったため、1995年にPL法が施行され、被害者は製品に欠陥が存在し、それによって身体・財物に損害が発生した事を立証すれば製造業者に賠償請求が出来ることになりました。ちなみに、製造物には未加工の農林水産物や不動産、ソフトウェア等の無対物は含まれないこと、責任主体となるのは製造業に限らず、輸入業者やプライベートブランドの販売元であるスーパーや百貨店も対象となるため注意が必要です。

製品の欠陥は一般的に「設計上の欠陥」「製造業の欠陥」「指示警告上の欠陥」に分けられるため、それぞれのプロセスでリスクコントロール対策を行う事が求められます。具体的には、「設計上の欠陥」に対して製品の安全レベルを設定したり、安全装置を組み込み、安全性テストを行う事が求められます。「製造上の欠陥」に対しては、優良な納品業者を選定し、納入された原材料・部品の検査を徹底すると共に、機械設備の保守管理や作業場の整理等を行う事で、機械設備の故障や異物混入を防止する事が大切です。「指示・警告上の欠陥」については、幅広い消費者や使用状況を想定して取扱説明書や警告ラベルを分かりやすく、正しい理解が出来るように記載する必要があります。また、損失を最小化するために、クレーム対応体制を構築して適切に対応すると共に、事実確認を通して早期かつ円満に解決する事が重要です。

PL事故は甚大な損害に繋がる可能性があることから、一般的に企業はPL保険に加入しています。PL保険は法律上被害者に支払うべき損害賠償金(治療費・慰謝料・修理費等)や訴訟費用などを支払う保険ですが、対人・対物事故が発生せずに経済的損失のみが発生した場合は対象となりませんので注意が必要です。具体的には、納入した部品が原因で機械が1週間止まり、売上が減少して損失が発生したとしても、対人・対物事故が無ければ支払対象となりません。このようなリスクに対応するためにはE&O保険等を準備する必要があります。また、PL保険においては、保険の対象となる事故の考え方が「事故発生基準(保険期間中に発生した事故を対象)」と「賠償請求基準(保険期間中に賠償請求された事故を対象)」の二つがあるため、免責期間が出来ないように注意すると共に、「賠償請求基準」の場合は遡及日を設定する必要があり、遡及日以前に発生した事故については免責となるため注意が必要です。

NPO法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 副理事長
株式会社AIP 代表取締役 CEO 松本一成