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2019.09.01

風水害リスクについて

昨年の台風21号(西日本豪雨)は200人以上の死者を出し、西日本に甚大な被害をもたらしました。今年に至っては8月の記録的な大雨で佐賀県に深刻な水害をもたらし、9月の台風15号は首都圏を襲い、風災による倒壊や停電の発生等により特に千葉県に大きなダメージをもたらす事になりました。一般的に地球の温暖化が進むと台風の強大化や高潮、洪水等の頻度が高まり、気象災害が多くなると考えられていますが、こういった温暖化によるリスク上昇は日本に限らず世界的な問題となっており、2100年には温暖化におる海面上昇が最大1.1メートルに達する事で沿岸の湿地は2~9割が消失し、生態系に影響が及び漁獲量が最大24%落ちると予測されています。そのような気候リスクの増加から気候変動リスクが企業の業績や事業に与える影響について開示する動きも本格化しています。

今回は気象災害の中でも風水害に焦点を当ててお話をしたいと思いますが、風水害にも様々な種類の災害があります。大きくは風災と水災に分かれますが、風災とは台風・竜巻・突風がもたらす強風による災害であり、広範囲に被害を発生させる特徴があります。水災は更に高潮・洪水・土砂災害等に分けられますが、高潮は沿岸部において潮位が上昇し、防波堤を超えて海水が陸地に流れ込むものを言い、遠浅で奥まった形状の湾で発生しやすいと言われています。洪水は更に河川の水量の急激な増加によって堤防が決壊・破損する事で発生する外水氾濫と大雨時の増水により市街地などで地域に整備された排水溝などの排水能力が追い付かず、水が排水出来ずに地表に水が溢れ出す内水氾濫に分けられます。土砂災害は山地や丘陵地などで集中豪雨等が発生すると地盤が緩み、地盤崩壊のメカニズムに応じて土石流・がけ崩れ、地すべりといった形で甚大な災害をもたらします。

風水災リスクの特徴として最初に挙げられるのは、広域に発生すると事が多く、被災した場合に復旧資材の調達が困難になって復旧が遅延し、自社に直接の被害が無くても電気・水道等のライフラインの寸断により大きな影響を受ける可能性があるという事です。2つ目は地域によって被害を受ける可能性に差異があり、同じ地域でも物件の場所や地形によってリスク状況が大きく異なります。具体的には九州・沖縄は台風の被害を受けやすく、沿岸地域は高潮、河川がある場合は洪水、都市部の低地は集中豪雨等の被害を受けやすい傾向があります。3つ目は物件の構造や地盤、床高によって被害を受けやすいか否かが大きく異なることです。そのため、自社の所有物件の所在地や特徴によってどのような被害に遭いやすいかを把握した上で対策を検討する事が求められます。

リスク対策としては、風災防止の場合は耐風設計や損傷個所の補強、シャッターの補強等が考えられますし、水災防止策としては、床面の引き上げや水に弱い設備の高所への移動、土のう・砂袋、防止版の準備や排水ポンプの設置等が考えられます。しかしながら、天災は避けられない部分もある為、事前に緊急時対応や防災組織を記載した防災計画書を作成すると共に、自家用発電用燃料や非常用の食品や飲料水等を準備しておくことも必要です。また、完全に損害をコントロールする事が難しく、被害額が甚大になる可能性があるため、最悪を想定して保険を準備しておくことも必要です。しかしながら、近年の風水害における保険金支払いの増加によって風水災をカバーする火災保険の保険料は高額化しています。今後も自然災害の増加が想定される事から、しっかりとリスクコントロールを行い、自社の財務力を付ける事によって効率的な保険設計を行う事が重要と言えるでしょう。

NPO法人 日本リスクマネジャー&コンサルタント協会 副理事長
株式会社AIP 代表取締役 CEO 松本一成